金属排水処理の成立要件は
(1)金属陽イオンと汎用的に反応を起こし沈殿物を生成する陰イオンの添加。
(2)その沈殿物が再溶解しないこと(溶解度積が小)。
この2条件を満たす陰イオンはアルカリのOH-と硫黄のS2-である。3番手は見当たらない。原理的には(2)の方が遙かに優れているが、2つの重大な欠点で(2)の硫化物法は見捨てられ、一般的には普及してこなかった。
水酸化物法 M2+ + 2OH- + nH2O = M(OH)2・nH2O↓ (1)
硫化物法 M2+ + S2- = MS↓ (2)
硫化水素の発生 2H+ + S2- = H2S (3)
石灰や苛性ソーダを㏗計の指示で添加する水酸化物法は、長年に亘って全世界ほぼ100%金属排水処理法として行われてきた。しかしながらこの方法は脱水汚泥が構造水を多く含みゲル化するため、含水率が高く金属含有率が低いため、たとえ有価金属が10%程度含んでいても、金属製錬所は有価物として受け取ってもらえないことが多い。やむなく埋立地などに投棄されているのがほとんどである。
金属は元素であり、精錬すれば未来永劫に循環使用でき、リサイクルし易い物質であるが、金属水酸化物汚泥になると循環使用は困難である。実際にめっき汚泥の90%以上が捨てられており、金属資源が枯渇高騰し、最終処分地不足が叫ばれている中で、「廃水の高度処理と金属資源回収」を両立できる技術はないかと常々思っていた。
一方、硫化物法は原理的には優れているが2つの重大な欠点がある。
(1)(3)式のように悪臭を引き起こす硫化水素の発生する場合がある。
(2)硫化剤添加が終点を過ぎるとコロイド化し、排水処理がなりたたない。
上記2つの欠点を解決したのが「硫化水素ガスセンサー制御硫化物法(NS法)」である。